「先生の小銭入れ」
長浜博 玉川大学上原研究室1985年度卒業生
神奈川県平塚市立小学校非常勤講師


私の学年の研究室のメンバーは男子5名、女子5名、合計10名で、ほかの学年に比べるととてもバランスのとれた学年でした。私たちには授業以外に、毎日一つ日課がありました。それは上原先生の昼食を学生食堂から研究室に届けることでした。毎日交代で2人くらいで1組になって届けるのです。

私は友人のK・N君とペアになって「神にお供えに行こう!」などと冗談を言いながらよく届けに行きました。どんなメニューがふさわしいかいろいろ悩んで決めていましたが、ただ一つ守らなければならないことがありました。それは先生の苦手なトマト(だったと記憶しています)が入っていないものを選ぶことでした。たとえ入っていたとしても叱責を受けるわけではないのですが…。

一度(だけだったと思いますが)失念していて届けるのが遅くなってしまったことがありました。その時思いのほか穏やかに「飢え死にするかと思ったよ。」と言って、ぶよぶよになった小さな小銭入れから定食代を取り出して渡してくれたことが何故か心に残っています。