上原輝男先生の命日に寄せて
2026,3,24

玉川大学上原研究室1985年度卒業生
神奈川県平塚市立小学校非常勤講師


 大学1年生の春に一般教養の「文学Ⅰ」の講義を受けてから上原輝男先生という、近寄りがたくも魅力的な先生に出会い、とうとう研究室は上原研究室を選んだ。先生との思い出はいろいろあるけれども、勉強(研究)嫌いで頭の固い私は、褒められるよりも怒られることの方がはるかに多かった。ところが、そんな私にもたった一度だけ褒められる経験があった。

それは、1983年秋の上原研究室の研修旅行でのことだった。埼玉県秩父郡にある三峰神社を中心に「三峰信仰を探る~信仰と生活と教育を考える~」というテーマで二泊三日で行った。その研修二日目に先生と学生で歌会をしたのである。ただ詠むだけでは面白くないから、出し終わったら投票しようということになった。その時の作品の記録が残っているのですべて記してみる。学生10名に先生を加えた11名の作品である。




① 眷属は四方の守りに飛びわくか 嶺々を離るる白雲の影

② 三峰の霧にうかびし尾根もよう 世の小さきこと我忘れたり

③ 霧けぶる大神の里訪ねれば 我が魂招く産立の声

④ 静けさに燃ゆるいろり火魅せられて 何をか想う二十の瞳

⑤ 囲炉裏端小さき炎に身を寄せて 吾まほろばの夢にひたれり

⑥ 三山の薄き衣を羽おりたる あの頂きに我が魂ありしか

⑦ いろ囲みいにしえの日を思ほれば 心に緩み背に秋の風

⑧ 遥かふる山を仰ぎ見時止まる 呼びかけられて我に気づく

⑨ 風吹かばくもりのぞくる三峰の 大神思ふ秋の三日月

⑩ あまの果てしかと見つめしまほろばの 勇者の如し妙法の巌

⑪ 幻の大口の真神前にして このよそ者が何を祈らむ



 
この原稿を読んでいる方は、どの歌に投票するだろうか。

結果、一席となったのが⑪、二席となったのが①だった。たった1票差だったと思う。この⑪が私のもので、①が上原先生のものだった。このあと、散文から歌が生まれること、自分の気持ち(物語)をつくってしまえば歌うことができること、「我」を使わずに「我」を表現しないと大げさになってしまうことなどを話してくださった。

一席になったご褒美というわけではないのだろうが、このあとの会の「進行役(司会)」を任されてしまった。もちろん、そんな大役をこなすことはできず、またまたお怒りを買ってしまったのは言うまでもない。